電波で初めてとらえられた「アインシュタインの十字架」 | アストロピクス

電波で初めてとらえられた「アインシュタインの十字架」

この画像はアルマ望遠鏡がとらえたもので、地球から約78億光年離れたところにある銀河群の重力により、約116億光年の距離にある「HerS-3」という銀河の像が5つに分かれて見えています。

アインシュタインの一般相対性理論によると、質量をもつ物体のまわりでは空間がゆがむために光が曲がります。光学的なレンズのようなはたらきをすることから、そのような現象は「重力レンズ」と呼ばれます。重力レンズによって、この画像のように奥にある天体の像が十字形に分かれて見えるものは「アインシュタインの十字架(アインシュタイン・クロス)」と呼ばれます。

今回の画像はサブミリ波や電波の波長でアインシュタインの十字架を検出した初めての例とのことです。

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目に見える天体だけでは「十字架」にならない

HerS-3からの光は、手前の銀河群にある4つの巨大銀河によって曲げられています。ただし重力レンズのモデルによれば、目に見える銀河だけでは、5つの像の配置を正確に再現できないことがわかりました。

それらの配置を説明するには、太陽の質量の数兆倍に相当する暗黒物質(ダークマター)が必要とのことです。暗黒物質は光(電磁波)を放出したり吸収したりすることがなく、重力の作用を通じてのみ検出することができる正体不明の物質です。

(参考)「アインシュタインの十字架」関連記事一覧

Image Credit: P. Cox et al. - ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

(参照)ALMA