ブラックホールに落ちて行くときにどんな光景が見えるのか、疑問に思ったことはありませんか。そんな疑問に答える映像をNASA(アメリカ航空宇宙局)が公開しました。コンピュータ・シミュレーションにより可視化した映像です。
ブラックホールには、それ以上近づくと光でさえ脱出することができなくなる境界があります。その境界面は「事象の地平面」と呼ばれます。
今回公開された可視化映像は、その事象の地平面の内部まで入って行くものと、事象の地平面に接近後にそこから離れて戻ってくるものと、2パターンが公開されています。
カメラが接近していくブラックホールは、天の川銀河の中心にある、太陽の430万倍の質量をもつ超巨大ブラックホールです。ブラックホールの事象の地平面は約2500万kmにおよびます。ブラックホールは高温で輝くガス円盤(降着円盤)に取り囲まれており、また円盤の内側には光子リングも見えています。
事象の地平面の内部に落ちて行くカメラからの光景
こちらは事象の地平面の内部まで落ちて行くカメラが見た光景を可視化した映像です。映像はまず、注釈なしのものから始まります。次に注釈ありの映像が流れたあと、光子リングのクローズアップ映像となります。以下、注釈ありの場面のスクリーンショットをもとに説明を加えていきましょう。
カメラがブラックホールに近づいていきます。左下には遠く離れた観測者と、ブラックホールに近づくカメラの時間の進みが表示されています。重力の強いところでは時間が遅れるため、カメラの時間はゆっくりと進んでいます。右下にはブラックホールとカメラの相対的な位置関係が示されています。
この場面では光子リングがはっきりと見えています。カメラは光子リングの奥を見ています。
カメラのスピードが上がるにつれて、進行方向からくる光がより明るく、白っぽく見えるようになります。
カメラは光子リング付近から、事象の地平面に向かって落ちていきます。
カメラが事象の地平面に到達。
事象の地平面の中でも、地平面の外からの光は入ってきます。ただその光が地平面から出て行くことはありません。
カメラが壊れ、その数マイクロ秒後に特異点に到達します。
こちらは注釈ありの映像部分に、編集部で日本語訳をつけた映像です。
こちらは飛行中に周囲を360度見渡すことができるバージョンです。マウスドラッグなどにより前後左右など好きな方向を見ることができます。
事象の地平面に接近後、戻ってくるカメラからの光景
こちらは、事象の地平面の中には入らずに光子リング付近を周回して戻ってくるバージョンの可視化映像です。
こちらは映像の途中の1場面。カメラは光速の60%の速度でブラックホールに最接近します。
空の天の川がゆがみ、複数に分かれて見えています。
ブラックホールから離れて行く途中、背後のブラックホールが2つに分かれて見えます。
かりに宇宙飛行士が6時間かけてブラックホールまで往復し、母船の同僚がブラックホールから遠く離れた位置にいるとしたら、往復した宇宙飛行士は同僚より36分間ぶん若い状態になります。
こちらの映像は飛行中に360度を見渡すことができるバージョンです。
Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center /J. Schnittman and B. Powell