偶然重なってみえる2つの銀河

この画像の左上に、2つの銀河NGC 3314aとNGC 3314bが重なり合っているのが映っています。一見すると、2つの銀河が衝突しているようにも見えます。しかし実際には2つの銀河は異なる距離にあって物理的には無関係で、地球から見たときに偶然、重なって見えているだけです。

銀河円盤が真上から見えているフェイスオン銀河が手前側にある銀河NGC 3314aで、斜めに見えている銀河NGC 3314bが奥にあります。NGC 3314aは地球から約1億1700万光年、NGC 3314bは約1億4000万光年離れています。このような銀河の配置により、塵がどのように星の光を吸収するかなどといったさまざまな特性を測定でき、銀河の組成や進化についての知見を得ることができます。

また画像の右下側には、UDG(ultra-diffuse galaxy)がかすかに見えています。UDGは、天の川銀河と同じくらいの大きさがあるにもかかわらず、星の数が100〜1000分の1程度しかない銀河のことです。UDGは非常に淡く、星形成ガスがありません。この画像に写っている「UDG 32」と呼ばれるUDGは、うみへび座I銀河団の中で最も暗く、最も拡散している銀河の1つです。なおUDGは、日本語では「超拡散状銀河」「超淡銀河」などと呼ばれることがあります。

画像は「VST Early-type Galaxy Survey(VEGAS)」という大規模研究プログラムの一環として、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVST(VLTサーベイ望遠鏡)で撮影されたものです。VEGASは、銀河団内の非常にかすかな構造を調査することを目的としています。イタリア国立天体物理研究所(INAF)のEnrichetta Iodice氏の研究によると、UDG 32はNGC 3314aから生じたフィラメントから形成された可能性が示されていますが、それを確認するにはより多くの観測が必要です。

画像は2021年11月8日にリリースされた、ESOの「今週の1枚(Picture of the Week)」です。

Image Credit: ESO/Iodice et al.

(参照)ESO