理論的に予測されながら未発見だったタイプの超新星が確認されました。画像はハッブル宇宙望遠鏡がとらえた銀河NGC 2146の画像に、ラスクンブレス天文台で撮影された超新星2018zdの画像(右側の明るい点)を合成したものです。この超新星2018zdは、「電子捕獲型超新星」と呼ばれるタイプの超新星であることが今回確認されました。
恒星は質量によって最期が異なります。比較的軽い星は白色矮星となる一方、重い恒星は超新星爆発を起こして中性子星やブラックホールになります。大質量の星は、中心部での核融合反応によって最終的に中心部に鉄ができると自らの重さを支えきれなくなってつぶれ、その後で超新星として爆発します。超新星となるかどうかの境界の質量は、太陽の8倍程度だと考えられています。
この境界付近の質量を持つ恒星は、「電子捕獲型超新星」と呼ばれる超新星爆発を起こすという理論的な予測が40年前になされていました。その程度の質量の恒星では、核融合反応によって最終的に中心部が鉄のコアになることなく、酸素やマグネシウム、ネオンからなるコアを形成し、電子の力で自重を支えるようになります。しかしやがてマグネシウムやネオンに電子が捕獲されて失われ、コアを支えきれなくなって超新星爆発が起きると考えられていました。
超新星2018zdは、2018年3月にアマチュア天文家の板垣公一さんによって爆発直後に発見され、アマチュア天文家の野口敏秀さんによって発見直後からの明るさの変化が詳しく記録されました。またアメリカ、カリフォルニア大学博士課程の平松大地さんらの観測チームにより、世界中の望遠鏡と宇宙望遠鏡を使って詳細な観測が行われました。
観測から推定された超新星に含まれる元素の量や爆発エネルギー、星周環境などは、電子捕獲型超新星の理論的な予測と一致していました。またハッブル宇宙望遠鏡が偶然観測していた超新星爆発前の状態から、この爆発は太陽の8倍程度の質量の恒星が起こしたものと推定されました。その結果、超新星2018zdは電子捕獲型超新星が持つと予測された特徴を全てあわせ持った天体であることが明らかになりました。電子捕獲型超新星が、理論予測から約40年の時を経てついに発見されたのです。
電子捕獲型超新星が実際に発見され、観測的な特徴が明らかになったことで、類似の超新星の発見が容易となりました。今回の発見をきっかけに、今後、多くの電子捕獲型超新星が同定され、発生頻度などの詳細な情報が得られるようになると期待されています。
Image Credit: NASA/STScI/J. DePasquale, Las Cumbres Observatory
(参照)国立天文台、国立天文台科学研究部、Kavli IPMU (論文)D. Hiramatsu et al. “The electron-capture origin of supernova 2018zd”