この画像は赤色超巨星「おおいぬ座VY星」周辺の星雲をハッブル宇宙望遠鏡がとらえたものです。星雲の大きさはおよそ3000億kmにも及びます。おおいぬ座VY星は知られている中でも最大級の恒星で、仮に太陽の位置にその星を置いた場合、木星軌道と土星軌道の間ほどの大きさになります。200年前は肉眼でもかすかに見えていましたが、その後暗くなり、現在は肉眼では見ることができません。
2019年から20年初めにかけて、オリオン座の赤色超巨星ベテルギウスが急に暗くなったことが話題になりました。ベテルギウスでは、放出されたガスから生成された塵がベテルギウスからの光をさえぎって減光したと考えられています。おおいぬ座VY星でも同じようなことが、ただしはるかに大きなスケールで起きていると見られています。塵の雲が星を隠してしまっているのです。
中央の画像は、ハッブルの画像のおおいぬ座VY星周辺を拡大したものです。星から放出された物質の塊や弧、フィラメントが星の近くに見えています。小さな赤い四角形は、おおいぬ座VY星の位置を示しています。1辺が太陽〜地球間の60倍の距離(60天文単位)で、海王星軌道の直径とほぼ同じです。右の画像は、おおいぬ座VY星の想像図です。
ミネソタ大学のRoberta Humphreys氏によれば、おおいぬ座VY星やベテルギウスで質量損失が大きいのは、大規模な対流セルによるものと思われるとのことです。私たちの太陽の表面には「粒状斑」と呼ばれる1000kmほどの大きさの対流セルがあります。おおいぬ座VY星の対流セルは、太陽全体と同じくらいか、それ以上の大きさの可能性もあるそうです。
Humphreys氏によれば、おおいぬ座VY星はいずれ超新星爆発を起こすのではなく、そのまま崩壊してブラックホールになる可能性があるとのことです。
Image Credit: NASA, ESA, and R. Humphreys (University of Minnesota), and J. Olmsted (STScI)
(参照)Hubblesite