「超コンパクト矮小銀河」は、矮小銀河から外層が剥ぎ取られた「化石」天体か

近くにある巨大銀河に、外層の星とガスを剥ぎ取られ、超コンパクト矮小銀河に移行しつつある矮小銀河を描いた想像図。
近くにある巨大銀河に、外層の星とガスを剥ぎ取られ、超コンパクト矮小銀河に移行しつつある矮小銀河を描いた想像図。

質量やサイズが小さな銀河は「矮小銀河」と呼ばれます。一方、天の川銀河などの銀河には「球状星団」と呼ばれる数万〜数十万個の星が球状に集まった星団があります。

球状星団よりは大きいものの、ふつうの矮小銀河よりはるかに小さな「超コンパクト矮小銀河(Ultra-compact dwarf galaxy、UCD)」と呼ばれる銀河があります。超コンパクト矮小銀河は1999年にはじめて発見された天体で、宇宙で最も高密度な恒星集団の1つです。

超コンパクト矮小銀河が、矮小銀河の残骸ではないかとする考えは、発見されたころから提案されてきました。しかしこれまで、矮小銀河から超コンパクト矮小銀河への移行段階にある銀河の証拠は明らかではありませんでした。

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移行段階とみられる銀河を多数発見

国際的な天文学者チームは、おとめ座銀河団を観測し、中間段階の天体の探索を行いました。研究チームはまず、ハワイ島のマウナケア山頂にあるカナダ・スランスハワイ望遠鏡(CFHT)で撮影されたデータから候補天体をピックアップしました。

その後、それらの銀河と、おとめ座銀河団より遠方にあって小さく見えている通常の銀河とを区別するため、CFHTと同じマウナケア山頂にあるジェミニ北望遠鏡で分光観測を実施。その結果、106の小さな銀河が通常の矮小銀河と超コンパクト矮小銀河の間の大きさであることが示されました。

今回の観測では、矮小銀河から超コンパクト矮小銀河への移行のさまざまな段階のものが見つかりました。また、ほぼすべての天体が巨大銀河の近くにあり、超コンパクト矮小銀河の形成には局所的な環境が重要な役割を果たしていることが示唆されました。巨大銀河により矮小銀河の外層の星やガスが剥ぎ取られ、最終的に超コンパクト矮小銀河になるのではないかと見られています。

Image Credit: NOIRLab/NSF/AURA/M. Zamani

(参照)NOIRLab